前章のテーマでエンゼルフィッシュの品種について、独立型と複合型の系統についてご紹介しました。今回は品種の組み合わせによって名前が変化する特殊な改良品種について掲載します。
品種の組み合わせにより名前の変わる種類とは?
前回の飼育繁殖 思案の第8章では基本的な品種を解説しましたが、一般的に販売されている品種の中でも独立型品種+複合型品種の組み合わせにより品種改良された種類は多く存在しています。
代表的な品種として「レッドトップエンゼル」と「トリカラーエンゼル」はお店で販売されていることが多いと思います。この2種類の品種は遺伝子的にはレッドトップエンゼルは2品種の組み合わせ、トリカラーエンゼルは3品種の組み合わせにより作り出されている品種です。それでは、どのように名前が変化するのか、またどのようなパターンで名前が変化するのかについて検証してみたいと思います。
名前の変化する品種の特徴:レッドトップエンゼルについて
レッドトップエンゼルについては第1章の「レッドトップエンゼルと色揚げ処理について」でも掲載していますが、レッドトップエンゼルの名前で販売されている個体には単にゴールデンエンゼルを赤く色揚げした個体と遺伝子的な交配パターンとして成立する個体の2タイプが存在します。当店では色揚げを行わなくてはゴールデンエンゼルに戻ってしまうような紛い物をレッドトップエンゼルとは呼びませんので、後者の遺伝子的に成立する品種のみをレッドトップエンゼルとして扱います。
遺伝子的に成立するレッドトップエンゼルの定義は「ゴールデン」+「ブラッシング」の組み合わせによるもので、その中でも頭部が赤く染まる性質を持つ個体をレッドトップと呼びます。つまり、遺伝子パターンで名前を呼ぶ場合は「ゴールデンブラッシングエンゼル」となりますが、このレッドトップ系の品種は個体差が非常に多くレッドトップの範囲が狭いものもあれば、広い個体もおり、また頭部が赤くならない個体も存在します。
レッドトップ同士の子供でも個体差が多く小さなうちは特に判別が困難なことですが、レッドトップにならない白色一色の個体を「ホワイトエンゼル」と呼び区別されます。遺伝子的な交配パターンでは同じですが、個体の表す特長によって品種名が変わるのが、このレッドトップ系のエンゼルの特徴と言えるでしょう。
名前の変化する品種の特徴2:トリカラーエンゼルについて
トリカラーエンゼルはこの品種もまた名前について色々と言われている事があります。「トリカラーエンゼル」のほかにベールテールタイプは初めて製作した人の名前を称して「ギアンニズ・コイ・エンゼル」と呼ばれることもあります。
この品種は当店ではレッドトップエンゼルにマーブル模様を加えただけの品種なので全く新しい品種を誕生させたのであればともかく、品種の組み合わせで作られた品種に製作者の名前を賞する事はおかしいと考えます。そのため、当店ではこの品種については「トリカラーエンゼル」と呼ぶことで品種としての定義をまとめています。
さて、上記の文である程度は書いてしまいましたが、トリカラーエンゼルは「ゴールデン」+「ブラッシング」+「マーブル」の3つの品種の組み合わせによって成立している品種です。この中でレッドトップの定義を満たしている個体をトリカラーと呼び、レッドトップの無い白色ベースの個体はホワイトマーブルエンゼルとなります。
レッドトップとトリカラーの違いはマーブル模様の有無であり、レッドトップエンゼルの定義を明確に与えていないとトリカラーエンゼルもゴールデンマーブルエンゼルの色揚げ個体を呼ぶことにも繋がりかねないので注意をして頂きたい所です。
その他の改良品種における名前の変化
この他にも色々な品種で名前の変化がありますが、代表的な品種としては並エンゼル+ダイヤモンドでは「シルバーダイヤモンド」と名前が変わります。並エンゼルのバンド模様の無い個体を「シルバーエンゼル」と呼ぶ事もあり、このエンゼルは同時にバンドがスポット状になった個体を含めて「ゴーストエンゼル」と呼ばれるケースもあるので複雑です。
また流通量も限られていることから、ちゃんとした品種の定義が存在しない種類も存在しています。例を挙げるときりがありませんが、他にも近年になって新しく登場した「プラチナエンゼル」はまだ登場して間もない種類のためか「プラチナブルーエンゼル」や「スーパークリスタルブルーエンゼル」などとも呼ばれているようです。
このような現象は新しく品種が登場すると嫌でも行われることですが、このエンゼルについては「プラチナエンゼル」の名前が最も妥当な名前ですから、今後はプラチナエンゼルの名前で統一されていくと思います。