第12章 ラムナン硫酸が熱帯魚の脂肪肝を予防する

この記事を書いているのは体調を崩して営業を休止せざる負えない状態になり、健康管理に人一倍の研究と努力を進めています。その中には熱帯魚の飼育・繁殖にも役立つような情報もあるのが救いと言った所でしょうか。

そのなかでも興味深いデータがあったのでご紹介します。海藻(ラムナン)で健康寿命を延ばす!(産学社出版・鈴木 宏治 著)のP97-98に書かれている内容ですが、タイトルにもありますように、水溶性食物繊維のラムナン硫酸をゼブラダニオ(書物の中ではゼブラフィッシュ)に与えると、高カロリーな飼料を与えても脂肪肝にならずに健康状態を維持できたと言うデータです。

ラムナン硫酸とは何か?

ラムナン硫酸はヒトエグサ、所謂、青のりやアオサと呼ばれる日本の海藻に多く含まれている成分だそうです。人間の肥満はメタボを中心に良くないことは周知の事実ですが、熱帯魚の健康に関してもその部分は同様です。

このエンゼルフィッシュ.jpは人間の健康について掲載するサイトではないので、あまり詳しくは書きませんが、メタボリックシンドロームの予防やコロナやインフルエンザの感染抑制効果、抗血栓作用に整腸作用、コレステロールの低下など、とても魅力的な健康効果が色々とある様子です。

詳しく知りたい方は、海藻(ラムナン)で健康寿命を延ばす!(産学社出版・鈴木 宏治 著)を読んでみる事をお勧めします。また、ラムナン硫酸を研究しているラムナン研究所と言う所があるので興味がある方は覗いてみて下さい。

ラムナン研究所 https://rhamnan-lab.org/

熱帯魚のメタボは問題視されないどころか歓迎される?

人間では過度な未満、所謂メタボが良くないことは周知の事実ですが、熱帯魚はプリプリに太っていた方が可愛い!と言う意見や単に餌をよく食べる姿を楽しむ飼い主も少なくないでしょう。脊椎の異常により体が寸詰まりの体型になったバルーン〇〇やショート〇〇と言った改良品種が色々な魚で作られているのが、そう言った需要を物語っています。

実際にマニアの飼育していた個体が亡くなり、原因究明のために解剖してみると、脂肪肝どころか、内臓全体が脂肪に包まれた極度な肥満体であるケースは、あまりに多く存在します。むしろ飼育下の個体で脂肪が少なく、理想的な状態と呼べる個体のほうが少ないと言っても過言ではありません。

熱帯魚の場合、人間とは異なり、雨季や乾季で餌を食べられない状態が続くようなケースに対応するために、脂肪を蓄えやすい性質があるのは確かです。ですが、水槽内飼育では無用なことですので、過度な肥満は寿命も短くしていることでしょう。

成長期の魚に関しては、栄養価の高い餌を十分に与えて育てることは悪いことではありません。ですが、成熟した個体に関しても同様な対応続けていると、余計な栄養が脂肪となって体や内臓に蓄積させるのは当然の結果と言えます。

水槽で飼育されている魚の肥満については、古い本になりますが、緑書房から発行された熱帯魚繁殖大鑑に解剖写真で脂肪だらけなエンゼルの写真などが載っていますし、私自身が病理解剖などで得た写真も沢山ありますが、解剖写真の掲載は一部の人に不快な思いをさせる可能性があるので控えておきます。

ラムナン硫酸で適切な栄養状態をキープできるのは一つの希望

水槽内で飼育されている熱帯魚が肥満体となりやすいのは上記で説明しました。このような過度な肥満体では、寿命が短くなってしまう問題点のほかに、正常に性成熟が行われなくなる弊害も存在しています。特に水槽内で繁殖が成功しないような魚種にはこの過度な肥満の問題でちゃんとした性成熟が進まず、繁殖に至らないケースも少なくありません。

そう言った飼育上の問題点を抱えている魚種の飼育・繁殖に挑戦するのには、ラムナン硫酸を加えた飼料により過度な肥満の防止につながるのはとても魅力的な話と言えます。

私が調べた限りではありますが、ラムナン硫酸を抽出したサプリも売られていますが、価格がなかなか良い値段なので、熱帯魚の餌として利用するのは難しいな…と思うのが実情です。もっと普及して生産量が増えれば、価格も安くなると思いますし、費用相対効果の見込める高価な熱帯魚であれば、試してみる価値もあるかもしれません。

また、スピルリナにもスピルリナ特有のスピルランと呼ばれるラムナン硫酸が含まれているそうです。スピルリナであれば、色揚げ用の人工飼料にも含まれているものもありますし、価格もそれほど高価なものではないので、ディスカスハンバーグなどに練りこんで与える方法も悪くないかもしれません。

熱帯魚の餌にはメタボを推奨するような餌はあっても、その逆なメタボ予防の飼料を謳った製品は無かったと思います。メタボな熱帯魚に喜んでいる飼い主が多いと、そんな飼料を開発しても儲からないのだと思いますが、そう言ったジャンルの人工飼料などができても良いのではないかと思うところです。


↓参考になりましたら、各種ソーシャルサイトでご紹介して頂けると光栄です。
エンゼルフィッシュ.jp > プロの語る 飼育繁殖 思案 > 第12章 ラムナン硫酸が熱帯魚の脂肪肝を予防する