第1章~第4章にて繁殖を行なう為の心構えから水槽のセッティングまで色々と紹介しましたが最後にいよいよエンゼルの産卵~稚魚の育て方について掲載します。
産卵に至るまでのペアの行動
エンゼルの産卵についてはまずペアを繁殖用の水槽に移動、しばらく飼育するとエンゼル達が産卵筒やガラス面など色々な場所を見つめて静止、もしくは突く行動が確認されるようになります。この行動はエンゼル達が水槽の中でどの場所が産卵に適しているか調べている行動の1つで産卵が間近に迫るとほぼ一ヶ所に焦点を絞り、オス・メス共に産卵床となる場所を突き掃除を行なうようになります。
産卵床の掃除を始めたら産卵は間近に迫っていますが、産卵の時期については個体差や品種の違い、もしくは栄養状態などにもよるのですぐに産卵するペアも存在すれば何週間も生まないようなペアもいます。この頃からエンゼルたちは神経質になり始めているので水槽を叩いたり、あまりジロジロと観察するのは避けましょう。
産卵の始まり
上記に掲載したような行動がしばらく続くといよいよ産卵が始まるわけですが、産卵の数時間前になるとオスもメスも総排泄口よりオスは輸精管、メスは輸卵管が概ね2mmほど外に出てくるので細い管の個体がオス、太い管の個体がメスだと容易に判別できるようになります。この輸精管と輸卵管がハッキリと確認できれば近々産卵が始まると言って良いでしょう。
産卵は産卵筒やアマゾンソードなどにメスが楕円形の2mmほどの卵を産み付け、産卵と同時にオスが卵の上をなぞるようにして受精させます。卵の数はメスの大きさや年齢にもよりますが、概ね300~500個ほどを一度に産卵する形となります。 まだ産卵に慣れていないペアは産卵筒などにバラバラの広範囲に産卵する事もあり、受精率も低くなりがちですが、産卵を繰り返す度に上達する事が多いので2度3度程度でペアが悪い…と諦めるのではなく、焦らずに見守るのが大切です。 またディスカスでは良く知られている事ですが、エンゼルもオスよりもメスの成熟が早く、焦って繁殖を狙い無精卵ばかりとなる場合はオスが未熟である可能性もあるので繁殖は焦らずにじっくりと腰を据えて取り組むのが成功の秘訣です。
卵の孵化~稚魚の育成
産卵から孵化までは水温によっても違いますが概ね2日~3日で孵化が始まり、孵化直後は卵に細い毛が動いているような状態ですが、次第に卵黄を吸収し成長します。ペアによっては産卵場所が稚魚を守るのに適さないと考えた場合は別のところへ移動する場合もあり、ペアの気分や環境によっては毎日場所を移動するような事もあります。
稚魚が順調に育つと産卵から1週間ほどで稚魚が回遊可能な状態になり、親の回りで小さな稚魚が泳ぎ出せば繁殖の半分はクリアしたと言っても良いでしょう。稚魚が泳ぎだすと同時にエサを食べる為、孵化直後のブラインシュリンプがベストですが、品物が無い場合は市販の粉末状のベビーフードや鶏卵を固ゆでした黄身をごく少量、水で溶いて与える方法もあります。
餌を与える回数は最低でも毎日1回以上、できれば最低2回は与える事で稚魚が餓死する事も少なくなる為、特に泳ぎ始めた数日間は最低2回は餌を与えるべきです。ブラインシュリンプを孵化させられない場合はハッチレスタイプの製品もあり、粉末飼料と比較すると栄養価が高いのでお勧めできます。
順調に稚魚が育てば概ね生後3週間も経過するとやや体高も高くなり、餌もブラインシュリンプだけでなく刻んだイトミミズなども良く食べるようになります。 ここまで成長すると親魚が子供を食べる心配もほぼ無くなるので安心して飼育する事が出来ると言って良いでしょう。
稚魚の成長は早く、生後1ヶ月もするとすっかりエンゼルらしい形に成長して親子の可愛らしい姿を見る事が出来ます。 稚魚の親離れについては子供の数にもよりますが、あまり大きくなると子供が空腹時に親を突くようになるため、概ね2ヶ月以内に親魚から離したほうが良いでしょう。
繁殖方法とその責任 コンテンツ一覧
第1章 繁殖を行なう前に…命を扱う責任
第2章 繁殖に向けた親魚の育て方
第3章 ペアの形成とその判別
第4章 繁殖水槽のセット方法
第5章 産卵~稚魚の育て方