第1章で紹介したカラシン類は南米を中心とした分布に対してコイ・ドジョウの仲間は日本を含め、東南アジアを中心にヨーロッパなど幅広い分布をもつ魚のグループです。日本にもコイの仲間は多く、鮒や鯉を例に挙げるまでもありませんが、オイカワやウグイ、ハスやモツゴなど多くの魚が日本にも生息しています。
熱帯性のコイ・ドジョウの仲間は美しい種類も多く、特にカラシンの仲間と比較して婚姻色により非常に美しい色合いを出す魚が多いグループです。エンゼルとの混泳ではどんな図鑑などにも真っ先に相性の悪い魚として登場するスマトラを初めとした活発に水槽を泳ぎ回る魚が多いと言えるでしょう。種類によってはやや気の荒い魚も多く、特にエンゼルの長く伸びたヒレを噛る性格を持つ種類も少なく無いので混泳には注意が必要なグループです。
コイ科の小型種とエンゼルの混泳
コイ科の小型魚については大きく別けてスマトラに代表されるプンティウスの仲間とラスボラの仲間に分かれます。学名の変更により図鑑では名前が変わっている魚も少なくありませんが、観賞が目的ですからあまり拘らなくても良いでしょう。
プンティウスの仲間はスマトラに代表されるように比較的活発な魚が多く、スマトラやオデッサバルブ、ロージィバルブなどはエンゼルのヒレを噛る可能性が高く、混泳は避けたほうが賢明でしょう。チェリーバルブやゴールデンバルブ、Pu.ゲリウスなど比較的おとなしいタイプであればエンゼルとの混泳も可能です。また、ゼブラダニオに代表されるダイオの仲間も非常に活発な魚が多く、ゼブラダニオを含め、空腹時にエンゼルのヒレを噛る種類もいるので注意しなくてはいけません。
ラスボラの仲間についてはプンティウスやダニオの仲間と比較すると温和な種類が多く、ラスボラ・ヘテロモルファやラスボラ・カロクロマ、レッドラインラスボラなどエンゼルに食べられないサイズを選べは混泳可能な種類が多いと言えるでしょう。 カラシンと比較するとやや地味な魚たちではありますが、しっかりと飼い込む事で素晴らしい魅力を発揮してくれる魚たちです。
ドジョウの仲間とエンゼルの混泳
ドジョウの仲間については意外と思われる方もおられると思いますが広い意味でコイの仲間です。日本にも柳川鍋でお馴染みのドジョウ、また一般的なドジョウのイメージとは異なるボティアの仲間、アユモドキも生息しています。
熱帯魚においてはドジョウの仲間で良く知られている魚はクラウンローチやクーリーローチと言った魚でドジョウの仲間と言っても大きく別けて一般的なドジョウ型とクラウンローチに代表されるアユモドキ型に分かれます。
ドジョウ型の種類とエンゼルの混泳については基本的に気の荒い種類は少なく、エンゼルに食べられないようなサイズに合わせる事で問題なく飼育できる場合がほとんどです。それに対してアユモドキ型の魚は性格もサイズも非常に幅が広く、クラウンローチやドワーフボティアのような温和な種類もいますが、気の荒い種類も多くスカンクボティアやレッドフィンボティアなどを混泳水槽に入れてしまい大変な経験をされた方もいる筈です。
スカベンジャーとして優秀な魚が多いドジョウの仲間ですが、エンゼルとの混泳に適した魚は多く無い為、温和な種類を除いては混泳しないほうが賢明と言えます。細長いドジョウ型のクーリーローチなどは小さすぎるとエンゼルが飲み込もうとして、喉に詰まる危険性もあるので注意しましょう。
コイ科の中型種・大型種とエンゼルの混泳
コイ・ドジョウの仲間の大型種については原則としてエンゼルとの混泳は難しいと考えておいたほうが無難でしょう。コイ科の中型種としてはポストフィッシュやプンティウス・フィメラントスス、バリリウスやブラックシャークなど、水槽内を非常に活発に泳ぐのでエンゼルのヒレを噛らない魚でもエンゼルのストレスになる事は大きいと言えます。
また、大型種のレッドフィンバルブやハンパラ、パーカーホなど、こう言った魚たちも論外です。例外的にエンツユイ(咽脂魚)は非常におとなしい魚なので混泳しても多きな問題は無いでしょう。あくまでコイ科の魚はラスボラ以外は相性の良くない魚も多いので注意をしなくてはなりません。
魚種別混泳マニュアルのコンテンツ一覧
1.カラシン類とエンゼルの混泳について
2.コイ・ドジョウ類の混泳について
3.ベタ・グラミー類の混泳について
4.ナマズ類の混泳について
5.シクリッド類の混泳について
6.メダカ類の混泳について
7.古代魚類の混泳について
8.その他・熱帯魚などの混泳について